大切な方が亡くなられたとき、あるいはお悔やみの言葉を述べる場面で、よく耳にする表現があります。
「安らかにお眠りください」
この言葉は、亡くなった方に対する祈りや追悼の気持ちを込めて用いられます。
ところが、SNSやブログ、あるいは弔電の文例などを見ていると、
「安らかにお眠りくださいって、実は失礼じゃないの?」
「遺族に対して使ってはいけないって聞いたけど…」
「もっと適切な言い方ってあるの?」
といった疑問の声も少なくありません。

目次
「安らかにお眠りください」の意味と由来
「安らかにお眠りください」基本的な意味
「安らかにお眠りください」とは、故人に対して、死後の安息・平穏を祈る言葉です。
この表現には、次のような想いが込められています。
- 肉体の苦しみから解放されて、静かに眠ってください
- 心安らかに旅立ち、安息の場で穏やかに過ごしてください
- 生前の苦労や痛みを癒し、安らぎの中でお休みください
つまり、亡くなった方の魂に向けて語りかける、慰めと敬意に満ちた言葉なのです。
「安らかにお眠りください」実際、「失礼」なのか?
結論から言えば、「安らかにお眠りください」という言葉自体は失礼な表現ではありません。
ただし、注意が必要な点は以下の通りです。
正しい対象は「故人」
この言葉は遺族に対して使うものではなく、故人に向けた祈りや気持ちの表現です。
❌「お父様、安らかにお眠りください」→ 正しい
❌「このたびはご愁傷様です。安らかにお眠りください」→ 遺族に言ってしまうと不自然
遺族へのお悔やみの言葉として使う場合は、違和感を持たれる可能性があります。
宗教や思想による価値観の違い
「眠る」「眠りにつく」という表現は、仏教・キリスト教・無宗教など、宗教観によって捉え方が異なります。
- キリスト教では「永眠」ではなく「神のもとに召された」「主に抱かれている」などの表現を好む傾向があります。
- 仏教では「成仏」「極楽浄土に行かれる」「安住される」などが使われます。
そのため、宗教観が明らかな場合には、その宗派に即した表現を選ぶのがベターです。
「安らかにお眠りください」が適切な場面
「安らかにお眠りください」が適切な場面1. 自分自身の心の中の言葉として
- お通夜・告別式の際、心の中で手を合わせながら伝える言葉としては非常に適しています。
「安らかにお眠りください」が適切な場面2. SNSやブログ、追悼文の中で
- 芸能人や著名人の訃報に触れた際の投稿などで、個人的な追悼の言葉として使うことも一般的です。
例
あなたの音楽に何度も救われました。どうか安らかにお眠りください。
「安らかにお眠りください」が適切な場面3. 弔電・弔辞の一文として
- 故人に向けた弔辞文の中で、締めくくりの言葉として自然に使うことができます。
例
生前のご厚情、誠にありがとうございました。心よりご冥福をお祈り申し上げるとともに、どうか安らかにお眠りください。
注意すべきケース:遺族に直接使う場合
遺族に対して「安らかにお眠りください」と言ってしまうと、文法的・意味的に少しズレた印象を与える可能性があります。
これは、まるで“生きている遺族に向かって眠れ”と言っているように誤解されることがあるからです。
このように言い換えると安心
- ご冥福をお祈り申し上げます。
- ご家族の皆様にも心よりお悔やみ申し上げます。
- 心穏やかにお見送りされることを願っております。
言い換え表現・類義語との比較
表現 | 用途 | 対象 | 特徴 |
---|---|---|---|
安らかにお眠りください | 故人 | 故人本人 | 柔らかく温かい印象 |
ご冥福をお祈りします | 遺族向け | 故人 | フォーマル・一般的 |
成仏されますように | 仏教系 | 故人 | 宗教色が強い |
主のもとで安らかに | キリスト教系 | 故人 | 宗派が明確な場合に適切 |
心よりお悔やみ申し上げます | 遺族 | 遺族 | もっとも安全で形式的 |
弔電や手紙での具体的な使い方
弔電例文(故人向け)
○○様のご訃報に接し、深い悲しみに包まれております。
生前のご厚誼に心から感謝申し上げます。
どうか安らかにお眠りください。
弔電例文(遺族向け)
このたびはご愁傷様でございます。
ご家族皆様のご心痛、いかばかりかとお察しいたします。
○○様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
まとめ:「安らかにお眠りください」は故人に向けた美しい言葉。遺族への使用は文脈に注意を
項目 | 内容 |
---|---|
正しい使い方 | 故人に向けた哀悼・追悼の言葉 |
適した場面 | 告別式、弔辞、SNS投稿、追悼文 |
避けたい場面 | 遺族への直接的な弔問挨拶としては誤用になりやすい |
宗教配慮 | キリスト教・仏教・無宗教で異なる表現もある |
言い換え | ご冥福をお祈りします/成仏されますように/主のもとで安らかに 等 |
おわりに
「安らかにお眠りください」という言葉には、日本語らしいやさしさと、故人への深い敬意が込められています。
正しく使えばとても美しい表現ですが、相手や文脈、宗教的な背景によっては注意が必要です。
大切なのは、言葉の正しさだけでなく、そこに込められた「心」がきちんと伝わること。
形式にとらわれすぎず、思いやりを大切にした言葉選びを心がけましょう。