絵画やイラスト、デザイン制作において、「黄土色(おうどいろ)」はとてもよく使われる色のひとつです。
土のような温かみを感じるこの色は、自然物や人物の肌、建物の影など、さまざまな場面で活躍します。
しかし、いざ絵具でこの色を作ろうとすると…
「茶色を混ぜてもなんか違う…」
「黄色と茶色の中間みたいだけど、どうやって再現するの?」
と悩んでしまう人も多いのではないでしょうか?

目次
黄土色とは?その特徴と色味の正体
黄土色の基本情報
黄土色とは、黄色に少し赤みや茶色を加えたような、土のような落ち着いた色合いです。
日本の伝統色のひとつでもあり、英語では“ochre”(オーカー)と呼ばれます。
- 色相:黄〜橙の中間
- 明度:中〜やや低め
- 彩度:中程度(くすみがかった印象)
黄土色はどんな印象を与える色?
- 温かみがある
- 素朴で落ち着いた
- 大地・自然・安心感
人物の肌の影や髪、自然物(山、木の幹、岩肌など)、建物の壁などに使うと、非常にナチュラルで深みのある表現が可能になります。
市販の「黄土色」ってどんな絵具?
多くの絵具メーカーでは、「黄土色」「イエローオーカー(Yellow Ochre)」という名前で販売されています。
たとえば、
- ホルベイン水彩:「イエローオーカー」
- ターナーアクリルガッシュ:「黄土色」
- リキテックス:「イエローオーカー」
こうした既製品を使えば簡単ですが、自分で色を作ることができれば、より微妙な色味の調整が可能になります。
黄土色の作り方:基本の混色レシピ
黄土色は、主に以下の3色を組み合わせて作ることができます。
黄土色の作り方:基本構成
- 黄色(イエロー):色のベース
- 赤色(レッド)またはオレンジ:黄みに温かさと深みを加える
- 茶色 or 少量の黒・青・補色:彩度を抑え、くすませる
混色パターン1:黄色+赤+黒
一番オーソドックスな方法です。
使用例(アクリルや水彩絵具)
- イエロー(レモンイエローまたはカドミウムイエロー)
- バーミリオン(朱色系)
- マースブラック(黒)
手順
- パレット上で黄色をベースに出す。
- 少量の赤を混ぜて、ややオレンジ寄りに調整。
- 最後に黒をごく少量ずつ混ぜて、くすみを出す。
※黒はほんの少しずつ足していくのがポイント。入れすぎると泥色になります。
混色パターン2:黄色+茶色
シンプルながら失敗しにくい方法です。
使用色
- イエローオーカー、またはカドミウムイエロー
- バーントアンバー(焦げ茶系)
手順
- 黄色を多めにパレットに出す。
- 茶色を少しずつ混ぜながら、理想の土色に近づける。
この組み合わせは、人物の肌の下地色としてもよく使われます。
混色パターン3:オレンジ+少量の青や黒
よりニュートラルで落ち着いた黄土色が欲しい場合に。
使用例
- オレンジ(カドミウムオレンジ)
- プルシャンブルーやマースブラック
手順
- オレンジをベースにする。
- 青や黒をほんの少し混ぜることで、色の鮮やかさを抑える。
青はオレンジの補色なので、入れすぎるとグレーになります。バランスが重要です。
失敗しやすいポイントと対策
1. 黒を入れすぎてしまう
→ 色がにごって「泥色」に。
対策としては、最初にベース色を多めに作っておくことと、黒は“ほんの耳かき1杯分”くらいずつ加えること。
2. 鮮やかすぎるオレンジや赤を使う
→ 派手な印象になりがち。
より落ち着いた色味を出すには、「バーミリオン」や「イエローオーカー」などくすみ寄りの色を選びましょう。
3. 水分量が多すぎる(水彩の場合)
→ 色が薄まりすぎて、黄土色の「重さ」が失われます。
特に下地づくりにはしっかり濃度を出すことが重要です。
応用テクニック:自分だけの黄土色を作るには?
微調整のポイント
- より黄色味を強くしたい → 黄色を追加
- 赤味を加えたい → 赤またはオレンジを追加
- くすみを強めたい → 茶色 or 補色(青や紫)をほんの少量
グラデーション作成にも便利
黄土色を中心に、黄色〜赤茶系までを段階的に作っておくと、木の幹、肌、布、岩などの表現に幅が出ます。
黄土色の使用シーンと効果的な活用
1. 人物画の肌トーン
肌のベース色として黄土色はとても使いやすく、赤やピンクを加えることで自然なグラデーションが可能です。
2. 自然風景
山や大地、古民家、木材、秋の景色など、自然な色合いにするために欠かせません。
3. 建築・インテリア表現
和風建築の壁や床など、ナチュラルな印象を出す時にピッタリ。
まとめ:黄土色は「調整の妙」で美しくなる
- 黄土色は「黄色+赤+くすみ色(茶・黒)」で表現できる
- 混色の基本は「少しずつ、バランスよく」
- 市販絵具を使っても、自分で調整することでより表現が深まる
- 肌・風景・建築など幅広い分野で活躍する万能色
おわりに
黄土色は、単なる「茶色」とは違い、自然であたたかく、絵全体のトーンを柔らかくまとめてくれる名脇役です。
自分の手で混色して作れるようになれば、色彩表現の幅が大きく広がります。
ぜひこの記事を参考に、あなたの作品にも美しい黄土色を取り入れてみてください!