言葉

「情がわく」とはどういう意味?使い方・例文・感情表現の奥深さを解説!

日本語には、英語など他の言語には訳しきれない、繊細な感情の動きを表す言葉が数多く存在します。

 

その中でも、あまり日常会話では聞かないけれど、文学作品やドラマなどで目にする機会がある表現の一つが「情がわく(じょうがわく)」です。

 

たとえば、こんなセリフ。

 

「初めは興味もなかったけど、だんだん情がわいてきてしまったんだ…」

 

なんとなく「好きになる」「愛着がわく」ようなニュアンスがありますが、実際にはどういった意味なのでしょうか?

 

また、どんなときに、どう使うのが自然なのでしょうか?

 

この記事では、「情がわく」の正確な意味・使い方・例文・類語表現・文化的背景まで丁寧に解説していきます。日本語の“心”に触れる表現力を、一歩深めてみませんか?

 

「情がわく」の意味とは?

「情がわく」とは、相手や物事に対して自然と愛情や思いやり、親しみの気持ちが生まれることを指す表現です。

 

ここでの「情」とは、単なる感情ではなく、深い人間関係の中で生まれる思いやり・愛着・哀れみ・親愛の情などを広く含みます。

 

「情がわく」言い換えると…

  • 愛着がわく
  • 思いやりの気持ちが出てくる
  • 情けの気持ちを感じる
  • 好意が芽生える

 

「情」の意味を深掘りする

「情(じょう)」という漢字には、以下のような意味があります。

 

意味 説明
感情 喜怒哀楽など、人間に自然に備わる心の動き
思いやり 相手を思う優しさ、いたわりの気持ち
愛情 好意、親しみの心、愛おしさ
情け 哀れみや同情、助けようとする心

 

つまり「情がわく」とは、こうした人間的で温かい心の働きが、自然と相手に対して芽生えることを意味するのです。

 

「情がわく」が使われる場面とは?

「情がわく」は、以下のようなシーンでよく使われます。

 

「情がわく」1. 苦労を共にした人に対して

一緒に働くうちに、苦手だった同僚にもだんだん情がわいてきた。

 

→ 共に時間を過ごす中で、自然と親しみや労りの気持ちが生まれる。

 

「情がわく」2. 動物や子供に対して

捨て猫を保護して世話をしていると、いつの間にか情がわいて手放せなくなった。

 

→ 弱い存在を守るうちに、強い愛着が湧く様子。

 

「情がわく」3. 相手の境遇に心が動かされたとき

境遇を聞いて、つい情がわいてしまい、お金を貸してしまった。

 

→ 同情や憐れみが引き金となって行動してしまう。

 


「情がわく」を使った自然な例文

 

「情がわく」日常生活での使用例

  • 昔は厳しい父親が嫌いだったが、今では情がわくようになった。
  • 何度も助けてくれた人には、自然と情がわいてくるものです。
  • バイト先の新人が頑張っている姿を見て、情がわいて色々教えてしまう。

 

「情がわく」小説・物語調の使用例

  • 無表情だった彼女の瞳に一筋の涙を見て、初めて情がわいた
  • 彼の不器用さに苛立ちながらも、どこか放っておけず、情がわく自分がいた。

 

「情がわく」と似た表現・類語

表現 ニュアンス・違い
愛着がわく 対象に親しみを感じ、離れがたくなる
好意を持つ 恋愛や友情に近い「好き」という気持ち
同情する 相手の立場に心を寄せて哀れむ気持ち
心を許す 警戒心が解けて信頼する
愛する 強い愛情、深い結びつき

 

「情がわく」はこれらの要素をすべて内包した柔らかく奥深い表現です。

 

「情がわく」が持つ日本的な美意識

日本語には、欧米の言語には見られにくい人と人との“間”を大切にする表現が多くあります。

 

「情がわく」もその一つです。

 

  • 恋ではないけれど、強い親愛の情を抱く
  • 恩を感じる、惻隠の情(そくいんのじょう)が働く
  • 相手の弱さや未熟さを受け入れる「情」

 

これは「義理と人情」といった、日本独特の感覚とも深く結びついています。

 

論理や条件を超えて、心で人を動かす力があるのが「情」なのです。

 

「情がわく」ビジネスや人間関係での応用

ビジネスにおいても、「情がわく」は相手との信頼関係を築くきっかけとなる心の動きです。

 

「情がわく」上司と部下の関係で

はじめは成果主義で接していたが、努力を重ねる姿に情がわいて支援を惜しまなくなった。

 

「情がわく」クレーム対応で

厳しい意見の裏に真剣さを感じて、情がわき、より丁寧に対応するようになった。

 

人と人の距離を縮める、感情の潤滑油として機能します。

 

「情がわく」を使うときの注意点

  • 過度な情は利用されることもある
    → 「情にほだされる(情に負けて正しい判断ができなくなる)」という言い回しもあるほど。

 

  • ビジネスではバランスが重要
    → 感情だけでなく、理性やルールとのバランスを保つことが大切です。

 

「情がわく」の文法・活用

活用形 例文
現在形 情がわく
過去形 情がわいた
否定形 情がわかない
可能形 情がわきやすい、わきにくい
使役形 情をわかせる(文語的)

 

まとめ:「情がわく」は人間らしさの表れ

「情がわく」という表現は、人間関係の中で生まれる自然な感情を表す美しい日本語です。

 

ポイントまとめ

  • 「情がわく」とは、相手に対して愛情・思いやり・親しみが湧き上がること
  • 一緒に過ごす中で生まれる、信頼や共感の気持ちを含む
  • 恋愛感情とは異なり、もっと広く深い人間的なつながり
  • 日本文化や人情味を象徴する言葉
  • 小説やエッセイ、心情描写にぴったりの表現

 

おわりに

私たちは日々、さまざまな人と出会い、関係を築き、別れていきます。

 

その中でふと、「この人には何か情がわいたな」と思える瞬間こそ、人間らしい心のつながりの証ではないでしょうか。

 

理屈ではなく、心が自然に動かされる――そんな瞬間にこそ「情がわく」という言葉はふさわしいのです。

 

  • この記事を書いた人

ゆいと

言葉の意味や語源、日常で使われるフレーズの雑学を発信|「知ることで会話が豊かになる」「言葉を大切にしたい」がモットー|難しいことをわかりやすく、を意識して書いています|ご質問・リクエスト大歓迎です!

-言葉