「老舗」という漢字、あなたはどう読んでいますか?
テレビや雑誌、ガイドブック、あるいは観光地でよく目にするこの言葉。
- 「京都の老舗(しにせ)旅館」
- 「創業300年の老舗(しにせ)の和菓子屋」
- でも…漢字だけを見ると「ろうほ」とも読めそう…
実は、「老舗」は一見読みづらく、しかも「読み方が複数存在する」と思ってしまいがち。
でも、これは読み方の混乱と日本語独特の歴史背景が絡み合った、非常に興味深い言葉なのです。

目次
結論:「老舗」は正しくは「しにせ」と読む
最も大事なポイントを最初にお伝えすると、「老舗」は正しくは「しにせ」と読みます。
読み方
老舗(しにせ)
これは日本語における特殊な熟字訓(じゅくじくん)であり、個別の漢字の音や訓にとらわれない読み方をされる単語です。
「老舗(しにせ)」の意味とは?
「老舗」は、長い年月にわたって営業を続け、広く知られている伝統ある店や企業、商家のことを意味します。
「老舗(しにせ)」意味のポイント
- 長い歴史がある
- 信用・信頼を積み重ねてきた
- 伝統的な商売や技術を守っている
- 地域や業界で有名である
「老舗(しにせ)」例文
- 京都には数多くの老舗(しにせ)が残っている。
- 創業100年の老舗(しにせ)旅館に泊まる。
- あの老舗の味は、三代目がしっかり受け継いでいる。
なぜ「ろうほ」とは読まないの?
「老=ろう」「舗=ほ」と読めるため、機械的に音読みすれば「ろうほ」になりそうですが、これは誤りです。
理由1:熟字訓という特別な読み方
「老舗」は、熟字訓(じゅくじくん)という、日本語特有の読み方で構成されています。
熟字訓とは?
- 複数の漢字が合わさったときに、個別の漢字の訓読みや音読みを無視して、特定の読み方をする熟語のこと
例
-
- 合点 → がてん(合=あう、点=てん、でも“がてん”と読む)
- 相撲 → すもう(あい+ぼく、ではない)
- 出納 → すいとう(しゅつ+のう、ではない)
「老舗(しにせ)」もこの仲間であり、慣用的な読みが定着している語彙です。
理由2:日本の商文化の歴史的背景
「老舗(しにせ)」という言葉は、江戸時代以前から商人文化の中で自然発生した日本独自の表現であり、中国由来の音読みとは異なる文脈で形成され
た言葉です。
「しにせ」の語源とは?
「しにせ」は、「死にせ(死店)」に由来するという説が有力です。
これは、
「創業者(初代)が亡くなった後も、店が続いている」=死にせ→老舗(しにせ)
という意味から来ていると言われています。
つまり、「老舗」とは「創業者の死後もなお商売を続けている歴史ある店」というニュアンスを持ちます。
現代における「老舗」の使用範囲
かつては「創業100年以上」など、非常に長い歴史を持つ店に限定されていましたが、近年では「創業30年以上」「代々継承している」といった比較的柔
軟な基準でも「老舗」と呼ばれることが増えています。
現代の「老舗」キーワード
- 〇〇創業(明治元年、昭和3年など)
- 〇〇代目(2代目、3代目、5代目など)
- 伝統の味、職人技
- 手作り、地域密着、秘伝の製法
- 地元の名店、昔ながらの
ビジネス・マーケティングでの「老舗」の効果
「老舗」という言葉には、信頼・安心・品質保証・ブランド力など、消費者にとって非常に強い印象を与える力があります。
たとえば…
- 「創業百年の老舗」→ 歴史と実績がある
- 「老舗が監修したスイーツ」→ 品質への期待
- 「老舗旅館のもてなし」→ 接客・伝統の高さ
このように、「老舗」はブランドワードとしても強力なキーワードなのです。
「老舗(しにせ)」の誤用や注意点
「ろうほ」と読んでしまう
- 「老=ろう」「舗=ほ」と読めてしまうが誤用
- パソコンやスマホで変換して「老舗」と出たからといって、「ろうほ」とは読まない
言い間違いに注意
- 面接や商談、ナレーションなどの場で「ろうほ」と読んでしまうと、教養がないと思われる可能性が高い
類義語・関連語との違い
言葉 | 意味 | ニュアンスの違い |
---|---|---|
老舗(しにせ) | 長年続く伝統ある商売や店 | 歴史・伝統・信頼のイメージが強い |
名店 | 有名な店、評判の高い店 | 歴史よりも人気・話題性に重きを置く |
老舗企業 | 歴史ある企業全般 | 飲食以外の業種にも使える(製造業など) |
老舗ブランド | 長く愛されているブランド | 商品・企業・サービスなど幅広く使える |
まとめ:「老舗」は“しにせ”が正解。音読みではなく歴史的な読みを大切に!
項目 | 内容 |
---|---|
正しい読み方 | しにせ |
誤読しやすい読み方 | ろうほ(×) |
読みの理由 | 熟字訓による特別な読み方、日本語独自の表現 |
意味 | 長年営業を続ける伝統ある商店・企業 |
使用場面 | 和菓子店、旅館、料亭、企業のPR、観光案内など |
おわりに
「老舗」は、見た目の印象からつい「ろうほ」と読んでしまいがちですが、正しい読みは「しにせ」です。
そしてその背景には、日本の商文化や家業の継承、歴史と信頼に裏打ちされた意味が込められています。
言葉には、その国の文化や価値観が深く刻まれています。正しい読み方と意味を理解することで、あなたの日本語力もさらに深まり、文章や会話に説得
力と品格が生まれるはずです。